【回顧録】 シリコンバレーだより(11)

【回顧録】 シリコンバレーだより(11)

【回顧録】 シリコンバレーだより(11)
2018年1月17日 10:42:06 作成
シリコンバレーだより(11)
CMU(力一ネギーメロン大学)でオムロンのCFを撮影
今回は、TVに関した話題を2つお届けします。
CMUでのオムロンのCF撮影が実現!!
その1は、例のCMUで撮影したCFです。CMUのCFと言えば某ビールのものが有名で、CMUでもTV- CFの話になるとこの話がよく出てきます。私も最初は、「CMUでCFがとれるといいなあー」と思っていましたが、なにしろ、コンピュータサイエンスの本場で、コンピュータを題材にしたCFをとることなんか、夢だと信じておりました。
CMUのパブリック・リレーションの担当の人に聞いても「ビールならともかく、ワークステーションではねえ」としか答えてくれません。そこで、「え一い、ままよ」と、コンピュータサイエンス・スクールの責任者の人にダメモトで言ってみたら、これが意外に、アッサリOKが出てしまいました。その足で、ラシッド先生の所へ出演をお願いに行ったら、「聞いてるよ」と手回しよく、連絡がいっていて、トントン拍子に話が進みました。
あのCFの出演者は、みなさんよく御存知の、知っていない人はあのCFで黒板の前に立って何か言っているのが、ラシッド先生。ヒゲ面のポブバロン。その隣のランディディーン。この3人は、Mach−OS開発の中心メンバーです。オムロンからは、藤田さん、乾さん、ジェフリーさんが出演していて、彼らの顔はドアップで出てきますし、私もチョロット出させていただいております。その他の人も、CMUの学生です。ちなみに背の高い女性はモデルですので、念のため。
このようにMach−OSの開発に関わっている重要人物が多く登場するにもかかわらず、30秒のCFというのは短かすぎる気がします。とにかく、内容がCFにしてはスゴイ! 解説編でも作りますか!
さて、どういう作り方をしたかを紹介しましょう。 実は、あのCFの順序とは逆に作ったのです。つまり、CFでみんなが集まってワイワイやっているような場面がありますが、あの場面からスタートしたのです。あの場面では、ラシッド先生が私の所まで歩いてきて話しかける、というのも入っているのですが、普通に見てたのでは、何も分かりませんね。 先生に何回も歩かせたり、何を話したらいいのか分からずに困った、とか色々苦芳したのに・・。 あの場面だけでも、午前中いっぱいかかってしまいました。 やっばり2時間ぐらいの映画をつくるには1年ぐらいかかるんですね、納得。
最後にとったのは、最初に出てくる場面で、みんながドドーっと歩いてくる所です。 これはもう何回も歩かされて、ヘトヘトになりました。そのうちにラシッド先生が、「もういや、帰る!」と言い出すのではないかと、私はヘトヘトの上に、ヒヤヒヤでありました。 結果的に、大した事故もなく1日であの30秒(!)のCFが出来上がっという訳です。
LUNA−88Kで作られたCGがNHKに登場!!
話題その2。今(これがみなさんの所に届けられる頃でも)、NHKでシリーズ放映している「アインシュタイン・ロマン」の中で使われているCGは、何とLUNA一88Kで作られたものなんですよ。 今、これを書いている時点では、まだ2回しか放映されてなくて、CGの本領を発揮する所までは行っていませんが、そのうちにはどんどん出てくるものと思われます。
アインシュタインの「相対性理論では、光が重力で曲げられる重力レンズとか、光速に近くなると、見ている物が進行方向に縮んで見えるとか、色々と常識では考えられないことがおこるわけですが、これをCGで実際に見えるようにしてみよう、というのが、このプロジェクトの目的です。こういうCGを作るためには、画面を1枚1枚(1秒間に60枚必要)計算して作り出さねばなりまぜん。 つまり、非常に大きなコンピュータパワーが必要となるのです。そこで、本来はスーパーコンピュータを使わないとダメなのですが、スーバーコンピュータを個人が占有することも大変ですし、コストが非常に大きくなります。
そこで、100MIPSを誇るLUNA−88Kに白羽の矢が立ったわけです。CGの画面を作る計算は、非常に並列処理に適していて、LUNA−88Kもその性能を100%発揮できます。このCGは、オムロンも使用できる(というより、LUNA−88Kの上でしか見れない〉ので、そのうちにショーなどのデモソフトとしてデピューすることでしょう。
NHKの番組をよく見てもらうと分かるのですが、「協力カーネギーメロン大学」というタイトルが出てきます。残念ながらオムロンの文字は見ることはできませんが。 CMUでは、LUNA−88Kは、このようなCGのほか、Mash−OSの開発はもちろん、音声認識等のコンピュータパワーが必要なブロジェクトには大いに活用されています。
最大の話題は湾岸戦争!
米国における最近の最大の話題は、当然のごとく湾岸戦争です。いくら現地と離れていると言っても、戦争当時国ですので、何かとピリピリした雰囲気はあります。町の中でも、車には黄色いリボンがつけてありますし、空港では不要なドアを閉じて、出入りする所を制限してあります。 空港のセキリティチェックも仲々厳しくて、普段ならパスずる所でもいやに厳重にチェックされました。 こういう場面における危機意識というのは相当なもので、戦争が始まったとたん、出張する人は極端に減少して、ある航空会社はフライトを間引きして運航するはどでした。 たいていのそこそこの会社には危機管理規定があって、もし戦争が起こったら、通達を出すまでもなく、自動的に出張等は制限されてしまうようです。米国のトッブの会社は戦争が始まる前に知らされていたというウワサもあります。
かく言う私も、わざわさ大阪から成田へ行ってJALに乗りました。気が付くと私と同じ、大阪−成田の便に乗っていたアメリカ人も私と同じJALに乗ってました。 おそらく、大阪から出てくるユナイテッドの便はガラガラではなかったかと思います。 ハイジャックなどなくても、変なおじさんが、「ボム(爆弾)だ」と言って、飛行機が大阪まで引き返したなんてこともありましたから。 しかし、いくら冗談と言っても、その無神経さには腹が立ちます。戦争当時国の飛行機で、みんなピリピリしてるのに・・・。 日本人の危機ボケを象徴する事件でした。
この戦争で有名になったのは、ニュースばっかりやっているCNN。私もこの戦争が始まったのを知ったのは、東京の某ホテルで見ていたCNNでした。 別に見たくて見てたわけではなくて、夜、寝れなくなってTVをガチャガチャやっていたら出てきたのがCNNという訳です。 ずーと、同じことを繰り返しやっているので、英譜のヒアリングの練習にはもってこいです。おまけに ”ガルフ”とかの時事用語がおぼえられる。 最近では、湾岸戦争も終結したのでCNNも大規模に報道することがなくて困っているとのことです。
金額がピンとこなかった人のために・・。
この戦争で話題になったのは、例の日本の90億ドル支援です。 政治的な内容はともかくとして、金額がピンとこなかった人も多いのではないでしょうか? 英語では、$9B(ピリオン)と書きます。 日本の菓大会社が、米国の大手映画会社を買収したのが、$7Bだから$9Bなんて大したことない、とか言うような記事がよく出ていました。ちなみにオムロンの総売り上げは、約$3Bです。アメリカでは、新興の会社が売上げ$1Bに達したら成坊とみなされて、”ワンピリ才ンカンパニー”と呼ばれます。
こういう風にビリオンで表現すると仲々よく分かるのですが、日本語と英語をチャンポンにして何億ドルと言っても、アメゾカ人にはもちろん、日本人にもよく分からないのではないかと患います。 この辺をピンとくるようにしておかないと、会話の途中で金額が出てきてもトッサに返事ができなくなります。
先日も某大セミコンダクタ会社の人と話をしていて、「我々は、次世代のセミコンダクタの生産設備に$0.5Bもつぎ込んでおるぞ! ど一だ!」という感じだったのですが、もし、次世代の設備としたらマアマアかな? と思ったぐらいでした。 以前なら、あんまりピンとこないので、栢手が「すごい!」と言えば、「すごいですね!」としか答えようがありませんでした。 いずれにしても、”ピリオン”なんて単位は我々の仕事にはあんまり関係なくて、”ミリオン”の方がよく使います。 $1Mは現在ですと、約1.3億円なので、だいたい「ミリオン=億」と億えておくと便利ですc
しかし、最も訳のわからんのは、日本円の英語表記。1ビリオン円と言われて ”えっ”と思って、よく考えてみたら13億円しかなくて、びっくりしたこともあります。 やっばり、日本円は日本語で、米ドルは英語で表現しましょう!
英語では「くやしい」を表現できない?!
最近、英語関係の本で面白いと思ったのは、ペストセラーにもなっている「続日本人の英語。 日本語と英語の本質に迫っていて、単なる読み物としても結構、面白い。 著者は、アメリカ人ですが、この人の日本語の文章もなかなかのもの。ヘタな訳者よりよっぽどこなれた日本語を書いています。 漢字なんか私よりはるかによく知っている。 その中で特に面白いのが、英語には「くやしい」という気持ちを表現する言葉がないということです。 正確に表現しようとすると、2〜3行文章を書かないと表現できないらしい(私にはわかりません)。 そこで私は、日本語を少し話せるアメリカ人をつかまえては、英語で「くやしい」と言ってみろと、いじめております。 最も多い答えは、「Shit(ちきしょう)」で、あんまり品のよい言葉ではありませんが、日本語、英語の違いがよく分かって面白いと思います。 やはり「くやしい」は、陰にこもって、そのうちにバケて出てきてやるという雰囲気がありますが、「Shit」は、何かカラッとして後に尾を引きそうな感じがしません。
この他にも、子供が転んで泣かなければ日本では「えらい!」とほめますが、これに相当する英語がない。よく考えてみたら、例えばこの「えらい」という言葉一つとってもいろんな意味があり、何というむずかしい言葉を我々は使っているのか、と考えさせられてしまいました。 あーあ、今書いている文章も意識すると段々変になってくる! (と、わざとズッコケてごまかしてしまった。)
ちなみに、この本の「続」でない方、つまり、第1巻はさぞかし面白かろうとワザワザBook急便でとり寄せましたが、「続」の方が断然面白かった。 面白ついでにもう少し紹介すると、我々が英語を使う時に、いつも混乱する複数形と単数形の使い分けや、冠詞の使い方など、ナルホドと思う解説がなされています。日本語は、文章の最後でニュアンスを伝えます。 例えば、「〜ですね」、「〜ですよ」、「〜ですって?」、「〜ですか?」、これに言い回しが加わると一体いくつの組合せができるのか想像もつきません。
英語では、こういうニュアンスの伝え方はないので、大人でも子供でも、男でも女でも、教科書に書いてあるのと同じ文章をしゃべっています。この辺が日本人としては、大いにフラストレーションのたまる所で、言いたいことが100%言えないという不満が残ります。 おそらくアメリカ人は、複数形や、冠詞を使って別の種類のニュアンス(おそらく言禽理的な)を伝えているんでしょう。 逆に日本人が、この辺をいい加減に話していると、栢手のアメリカ人はフラストレートされているのでは?と想像しております。
しかしまあ、しょせんネーティブスピーカにはなれないし・・・と居直って、相手が変な顔をしようと、フラストレートされようと、自分の言いたいことを言う努力をするのが、とりあえず一番ではないでしょうか。(また今回も話がぐちゃぐちゃになってしまった。スミマセン!〉

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